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私は、先月のコラムで中国のエネルギー事情が、今後は厳しさを増すと記述しました。その後、経済産業省は、帝国石油に対して東シナ海の石油ガス田の試掘を認めました。また、中国海洋石油総公司は、アメリカ議会の抵抗によって、ユノカルの買収を断念しました。これらはいずれも中国の暴走を阻止する重要な出来事でした。
現在の中国経済は、オリンピックや万博を控えた表面的な活況とは裏腹に、非常に深刻な状況をうかがわせる前兆現象が見られるようになりました。そのひとつはエネルギー問題であり、もうひとつは人民元の切り上げです。中国人民銀行によると、 6 月末の外貨準備高は、 7110 億ドルであり、年初から 1010 億ドル、 6 月だけで 200 億ドル増加したということです。そのため、中国は人民元を切り上げるとともに為替政策をドル・ペッグ制から通貨バスケット制に移行すると発表しました。
通貨バスケット制とは、複数の主要通貨に自国通貨を連動させるものであり、単一通貨に連動させるドル・ペッグ制よりは、為替相場が安定します。しかし、通貨バスケット制も固定為替相場制の一種であることには変わりがなく、今後いずれかの時点での人民元の切り上げが予想されます。つまりそれは、投機資金の流入を抑制するには不十分であって、現在のレートを維持するためには、外貨準備高が増加し続けることを意味します。
ここで問題となるのは、現在の世界経済において、一国の中央銀行が単独で為替レートを維持することは困難であるという現実です。目下、日米ともに人民元の切り上げを歓迎する姿勢を示しています。とくに貿易赤字の 4 分の 1 を対中貿易で占めるアメリカは、引き続き切り上げを迫る意向を見せています。すなわち、中国の元安政策に同調する国はありません。
かつて、日本は 1973 年に固定為替相場制から変動為替相場制に移行しました。それ以来、大きなトレンドとしては、円高ドル安の傾向にあります。しかし、日本は安い円に頼ることなく、優れた技術力で高付加価値の商品やサービスを提供することによって貿易黒字を積み上げてきました。 70 年代の日本には、既にアメリカを凌ぐ技術水準を確保する分野が多く存在しました。おかげで、日本は円高の逆風に耐えて輸出が経済を支えることに成功したのです。
一方、現在の中国は当時の日本ほど独自性のある自国製品があるわけではなく、豊富な労働力に起因する安さを武器に輸出で稼いでいるのが実情です。もちろん、中国はアメリカや日本に比べ、後発優位の利点を生かした急速な技術の向上が見込めます。とはいえ、 70 年代以降、アメリカが日本に感じたような技術的脅威が中国にあるかといえば疑問です。独自技術の開発よりも、安易な特許侵害や盗作が横行し、それが返って開発を妨げている観すら見受けられます。また、共産主義の政治体制のまま市場経済を導入した弊害として、一部共産党員の専横や契約に関する遵法精神の欠如などがあります。株式市場も民間の資金を国有企業に吸い上げるためのシステムに過ぎません。上場企業は基本的に国有企業であるため、資本主義国家の株式市場の概念とは懸け離れています。そのため、中国の官製市場経済は、近代合理主義ではなく儒教精神に立脚した清朝末期の洋務運動と同様の失敗を繰り返す危険性をはらんでいます。つまり、形式的には新たな制度を導入したものの、基盤となる思想を蔑ろにしたために、結局は発展が遅れてしまうという構図が再現されようとしているのです。
このように考察すると、人民元が大幅に切り上げられるなり変動為替相場制に移行して元高が進行するなりしたときに、中国経済が成長を持続する可能性は、低いと結論付けられます。もちろん、中国のバブルが崩壊したとしても、中国は日本にとって重要な貿易相手国であり続けるでしょう。しかし、対中投資に慎重になるべき時が、近づいています。また、中国関連で収益を上げている日本企業への投資も中国の動向を見極めながら、状況に合わせてポジション調整することが必要です。
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