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言いたくても言わない。書きたくても書かない。確たる証拠がなければ発言を自制し、誤りと分かれば即座に訂正し謝罪するのが大人というものです。結党以来最悪の不祥事を起こした民主党の永田議員にはいずれも欠如していたようで、対応は子供そのものでした。たとえそれが何者かの謀略であったとしても、ろくに検討しないまま乗せられた側にも責任があるのは当然のことです。昨今の民主党を概観すると、功罪ともに個人の資質に負うところが大きく、機能も思想も政党としての体をなしていない様子が窺われます。せっかくの馬淵議員の金星も永田議員の失敗でかすんでしまいそうな状況です。実際、伊藤元国土庁長官の政倫審での弁明に対する国民の関心は低く、証人喚問の実現が危ぶまれることは、追及が頓挫しかねないことの表れと言えるでしょう。また、肝心の武部幹事長と堀江被告の関係も真相解明から逸れた観があります。 4 点セットの問題が雲散霧消しかねないという意味でも永田議員と民主党の責任は重大であると言えます。
では、皆様は 4 点セットの中で、どの問題が最も切実でしょうか。私にとってはアメリカ産牛肉の輸入再開問題です。私は第 4 回のコラムの最後に「一日も早いアメリカ産牛肉の輸入再開に期待します」と書きました。もちろん、私の願いは全頭検査が大前提であったのですが、期待は見事に外れてしまいました。それどころか、閣議決定に反して現地調査を実施しないまま輸入再開を決定したり、日米の業者とも輸入条件を理解していなかったりと杜撰極まりない状況で輸入が再開された途端に、背骨が見つかって輸入停止の有様でした。
これは本当に危険なことです。輸入再開後にアメリカ産牛肉を食べて喜んでいた人がいたことを思うと、いまひとつ理解されていないようですが、異常プリオンは、通常の調理方法では全く不活性化されず、摂取して発病すると治療方法がないため確実に死に至ります。つまり、食後 10 年目に作用する青酸カリを知らないまま飲まされるようなものなのです。まさに、犯人の分からない完全犯罪です。たった一回、ごく微量でも食べたら死ぬかもしれないという恐怖は、ライブドア株に投資することの比ではありません。
政府は、アメリカ産牛肉を食べるか否かに関しても自己責任で押し通そうとしていますが、一般の消費者が牛肉そのものではなく加工品まで判別することは不可能です。食品安全委員会の委員を務める学者は、牛もフグも同じだと論じます。しかし、フグの毒で死ねば、調理した人間の責任が直ちに問われますが、クロイツフェルト・ヤコブ病で死んでも誰も責任を問われないでしょう。そのことに問題を悪質化させる懸念があるのです。責任問題だけに焦点を絞っても、牛肉もフグも同じとする考えがいかに詭弁であるかが分かるというものです。
まして、危険部位が完全に特定できず、続々と発見されている現状では完全に特定されているフグと同列に扱うのは論外です。また、異常プリオンは牛の体内を移動し増殖する点でもフグの毒とは異なります。ですから、どこが危険部位かわからないのに危険部位さえ除去すれば安全というのは論理的な整合性が全くありません。獣医学の専門家ではない私でも、この矛盾を考えただけで安全ではないと判断できます。
ここには、またしても政治家・学者・業者の三位一体が自己の保身や利権のために市民を危険に陥れる構図が、存在しているのです。アメリカの歓心を買いたい政治家が御用学者を使ってでたらめな報告をでっち上げ、それを業者が後押ししているのは誰の目にも明らかです。日本フードサービス協会は、アメリカ産牛肉の輸入再開の遅れを懸念していますが、消費者及び投資家は、会員各企業を十分に精査する必要があります。マスコミ各社が行った消費者向けのアンケートには、しばらく様子を見てから食べるかどうかを決めるという回答が見受けられます。しかし、 BSE は、そういう次元の問題ではなく、アメリカ産牛肉を扱う業者は避けるのが賢明な選択です。落語の饅頭恐いとは違って、牛肉恐いと言いながら食べた先には笑えない落ちが待っているのです。
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