COLUMN written by Yamazaki
第29回
 
会社法
 
 


  本日、会社法が施行されました。これまでは、商法、有限会社法、商法特例法等に分散していた会社に関する法規が一本化され、平仮名口語体表記になったのです。同時に株式会社制度と有限会社制度の統合、最低資本金の撤廃、手続きの簡略化など起業を促進する内容になっています。
  今般の会社法の改正で最も恩恵を受けるのは、中小企業です。これまでは、株式会社の創業時に約 1,027 万円必要であった設立費用が、約 24 万円に軽減されました(ただし、剰余金の配当には純資産が 300 万円以上必要)。人的な負担も株式譲渡制限会社では取締役 1 人で済むようになり、取締役会や監査役の設置が任意となりました。商業登記については、同一市町村において同種の営業について登記することが禁止されていた類似商号規制が廃止され、会社の目的についての登記も柔軟な記載が可能になりました。発起設立時に必要であった払込金保管証明制度も廃止され銀行の残高証明で足ります。現物出資も財産額が 500 万円以下の場合は検査役の調査が不要になります。これらにより、創業時の障害が一気に排除された観があります。また、譲渡制限会社の取締役と監査役の任期が 10 年に延長されました。逆に、設置は任意ではありますが、会計参与の制度が新設され、税理士や公認会計士等の会計専門家と取締役が共同して計算書類の作成や情報の開示を行うことにより決算書の信頼性を向上させることができます。こうした変更により、柔軟な機関設計が可能になり、会社の規模や目的に応じた多様な組織を構築できるようになりました。最も簡素な個人商店的株式会社の場合、約 24 万円さえあれば自分ひとりで会社を作れるようになるため、優れたビジネスモデルの構想があっても起業までたどり着くのが困難であった人々の起業が相次ぐことが予想されます。欧米と比較して起業のハードルが高いと非難されていた日本の制度がようやく国際基準に肩を並べるようになったことは、起業家だけではなく投資家にも大いにメリットがあると言えます。
  会社法の施行により、会社と投資家の関係も様々な変更がなされます。第一は、従来は認められていなかった株式の一部について譲渡制限をかけることができるようになりました。ただし、この場合は株式の全てに譲渡制限をしていないため、株式譲渡制限会社とはみなされません。第二は、発行済株式数の 2 分の 1 までとされていた議決権制限株式の発行限度額がなくなりました。これによって取締役は自分が保有する以外の株式の議決権を制限することにより、株主の干渉を受けることなく自由な経営を行う制度設計が可能になります。第三は、議決権や配当について株主総会の特殊決議によって株主ごとに異なる取扱いを定款に定めることができるようになります。これは有限会社の制度を引き継いだものであり、たとえば、議決権を株式の数ではなく 1 人 1 議決権にしたり、配当を株式の数ではなく株主の人数で割ったりするなどが可能です。裏を返せば、譲渡制限会社の株主になるということは、これまで以上に取締役の資質を厳正に判断することが必要になります。
  また、会社による自己株式の取得の方法にも変更がなされています。従来は、会社が自己株式の取得を行う場合、取得する株式の数、株式と引き替えに交付する金銭等の内容と総額、株式を取得することができる期間、譲渡人となる株主という事項を定時株主総会で決議しなければなりませんでした。今後は、剰余金の分配可能額の範囲であれば臨時株主総会の決議だけで行えるようになり、機動的な対応が可能になります。
  以上のように、会社法の施行は、毎年のように行われていた商法のマイナーチェンジとは異なる大幅なものであり、経営者にとっても投資家にとっても、より一層の自己責任が求められるようになります。私は、企業と消費者の関係では、情報に著しい非対称性があるため、消費者に過大な自己責任を負わせることには反対です。 BSE 問題に関して政府の対応を批判するのは、その最たる例です。どの食品にアメリカ産の牛肉が使われるようになるかは消費者には不明であり、だからといって何も食べなければ生きられないため、実際には自己責任の取りようがないからです。一方、会社法に関連する規制緩和は、経営者も投資家も機会や選択肢が増えるため、評価できます。もちろん、未公開株詐欺のような犯罪者も横行し、被害者も増えることでしょう。たしかに、制度を悪用するのは許しがたい行為です。とはいえ、投資家たる者、投資対象を十分に吟味することも能力のうちです。ライブドアの一部の株主のように、自ら進んで株を買ったくせに騙されたと泣き言を言うぐらいなら、株式投資などしないほうがましです。

 
平成18年5月1日
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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代表取締役会長
山崎 秀尚

 
 
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