COLUMN written by Yamazaki
第31回
 
プロ中のプロとド素人
 
 


  プロ中のプロを僭称する犯罪者に天罰が下りました。果たして村上被告は、何のプロだったのでしょう。小学生の時に父親から 100 万円をもらって株式投資を始めたという作り話からニッポン放送のインサイダー取引に至まで、全て嘘で塗り固めたその素顔は、知れば知るほど不憫に思えてしまいます。
  一方、ド素人という謙虚過ぎる自己表現で墓穴を掘った日銀の福井総裁は、他人が起こしたノーパンしゃぶしゃぶ問題では辞任したにもかかわらず、自分の不祥事では辞任するつもりはないそうです。実のところ、私は、福井総裁が村上ファンドの出資者としてどれだけ儲けようが、それ以外に莫大な金融資産を持っていようが、そのこと自体を理由に辞任する必要はないと考えています。マスコミや野党は、福井総裁が儲け過ぎていることをあげつらい、銀行預金の金利と比較するなど、世間に迎合した批判をしていますが、それは見当違いというものです。
  とはいえ、私は福井総裁を擁護するつもりは、全くありません。なぜなら、福井総裁は、仮に違法性はないにしても絶対に許すべからざる行為をしたからです。それは、今年 3 月に行われた量的緩和政策の解除直前に村上ファンドを解約したことです。このことは二重の意味で極めて重要な意味を持っています。
  ひとつは、金利を上げると株価が下がるという周知の事実がありますが、金利を上げる権限を持つ日銀総裁は、いつ金利が上がるか、つまり、株価が下がるかを知っているわけであり、下がる前に売れば確実に儲かるというイカサマをやったことになります。日銀総裁にしかできない、いわゆる究極のインサイダー取引です。
  もうひとつは、あまり誰も指摘していませんが、より重要なことです。それは、福井総裁が解約したことにより、村上被告が量的緩和政策の解除を認識したかもしれないということです。村上被告は逮捕前の記者会見で、自分のファンドはキャッシュマウンテンであるという話をしていました。つまり、多くの株を売り抜けて現金化してしまっているということです。ではなぜ、売ってしまったのでしょう。それは、福井総裁からの解約の申し出という一見、村上被告を見放すかのような行動が、量的緩和政策の解除を知らせる無言のアドバイスになったのかもしれません。たとえ直接的な表現がなくても、その程度のことを推測できない村上被告ではないでしょう。
  また、福井総裁は、村上ファンドへの資金の拠出は、利殖目的ではなかったと国会で答弁しています。では、平成 13 年に受け取った分配金 274 万円の使途を知りたいものです。この問いに寄付や慈善活動への使用と答えられないようでは国会答弁で嘘をついたことになります。今後、収益を寄付するとか報酬を返上するとかは問題ではなく、既に受け取った金を何に使ったかで利殖目的であったか否かの証明ができるのです。日銀総裁たる者、虚偽の答弁で国会を侮辱したのであれば、その罪は姉歯容疑者の偽証の比ではありません。
  こうした疑念を持たれる日銀総裁は、能力があろうが人柄が良かろうが、辞任しなけば日本の市場の健全性が保てません。また、地位に恋々として政府に借りを作ると、日銀の独立性も危うくなります。
  一部の観測では、今月半ばに金利の引き上げを実施してから辞任するかもしれないと言われています。それとも、政府の意向に屈して金利を引き上げずに総裁を続けるのでしょうか。これは、日本経済にとって大きな分岐点です。日本を良くすることなど何ひとつなかった村上被告とは異なり、福井総裁には日本の経済危機を救った功績があります。それだけに、これ以上晩節を汚すべきではありません。今、福井総裁と日銀は、その尊厳を試されているのです。

 
平成18年7月1日
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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代表取締役会長
山崎 秀尚

 
 
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