COLUMN written by Yamazaki
第32回
 
もったいない新幹線新駅
 
 

  「もったいない」という明らかなパクリのキャッチフレーズで滋賀県の知事選に勝利した嘉田由紀子氏。知事に就任してたった十日あまりで、県政運営に破綻の兆しが見え始めています。
  今回の知事選で注目を集めたのは、東海道新幹線南びわこ駅(仮称)の建設の是非が争点となったことでした。建設推進派で現職の 國松善次氏と建設反対派で政治経験のない嘉田氏との事実上の一騎打ちを展開したのですが、当初は不利と見られていた嘉田氏が、新駅問題に特化した選挙戦略で國松氏を逆転しました。いわば郵政民営化選挙の亜流です。私は、この衆愚政治の見本である選挙結果に危惧を抱きましたが、どうやら悪い予感が的中しそうな状況になりつつあります。
  そもそも、南びわこ駅は請願駅、つまり地元の自治体が資金を拠出することによって建設し、 JR に譲渡する形で計画が進められている駅です。そのため、滋賀県が約 117 億円、栗東市が約 101 億円、周辺の自治体が約 22 億円、合計約 240 億円の負担が予定されています。ところで、現在の滋賀県には約 9,000 億円の債務があり、財政は逼迫しています。嘉田氏は、これ以上の財政負担を避けるために南びわこ駅の建設凍結を公約に知事選に打って出たのです。その結果、多数の県民は、南びわこ駅に自分の払った税金が使われることを拒否ました。
  ここで小学生レベルの地理の知識を踏まえて考えてください。なぜ、県民の多くが栗東市に建設される南びわこ駅を無駄だと考えたのでしょうか。答えは簡単。滋賀県の真ん中には琵琶湖があって、湖東の栗東市と湖西や湖北の地域はほとんど何の関係もないからです。実際、湖西や湖北の人々は、推進派の國松氏を支持しませんでした。これでは、新駅建設の是非が争点になった時点で國松氏の勝ち目は皆無です。一方、南びわこ駅へのアクセスが便利な草津線沿線の栗東、湖南、甲賀の各市の得票数は、國松氏が優勢であり、嘉田氏の言う誰も望まない駅でないことは明白です。それどころか、正真正銘の地元住民の民意は建設賛成であるということを示しています。総得票数でも約 22 万票対約 19 万票で圧倒的な民意に推されたというほどの大差でもありません。
  もっとも、建設計画が白紙の段階でこの結果が出たのであれば、新駅の計画は凍結どころか完全に破棄するべきでしょう。ところが、今回の事案は、計画から 20 年が経過し、今年 5 月に着工されているところに問題があります。 マスコミは、財政の健全化や環境問題への取り組みを公約に掲げた嘉田氏が当選したことは、滋賀県民の民意の高さであると賞賛しました。しかし、実態は何のことはない、最後の最後に金を払いたくなくなったという無責任な一部県民のエゴイズムの反映に過ぎません。既に 154 億円を拠出して駅前の整備に取り組んでいる栗東市と栗東市民、そして立ち退きを迫られながら宙に浮いてしまった建設予定地の住民の立場を考えれば、梯子を外すかのごとき行為は、賞賛すべきであるとは言いがたいでしょう。反対するのであれば、 20 年前に推進派の知事を当選させなければ、何の問題もなかったはずです。
  さて、当選後の嘉田氏の行動を見ても、アポなしで国交省を訪れて大臣に会えなかったり(出張費がもったいない)、始まったばかりの議会の冒頭で小中学校の少人数学級の実施に関する公約が実現不可能であると言い出したり、挙句の果てには JR 東海に建設工事費用を支払ったりと、まともな政治家であるとは言い難い醜態が目立ちます。建設を凍結するのであれば、支払も停止すればよいではありませんか。
  私が危機感を持つのは、誰かが幸せになるにもかかわらず、自分に関係がない政策のためには税金を投入したくないという有権者の利己的な姿勢です。そうした姿勢につけこんだ候補者が当選すれば、誰も幸せにならない結果が待っていることを今回の知事選は示唆しています。もし、凍結によって JR 東海、栗東市を始めとする関係各市、建設予定地の住民などから損害賠償請求をされたらどうなるのでしょう。実際、 JR 東海の松本社長は、損害賠償をほのめかす発言をしています。また、今後は栗東市を通して話を持ってくるよう嘉田知事に要求しています。つまり、相手にするほどの人物ではないと見切ったのでしょう。ちなみに、嘉田氏を支持したのは北朝鮮と大の仲良し社民党です。それにしても、とんでもない人物が知事になってしまったものです。建設を凍結し、新駅が完成したとき以上の負債と新駅になりそこねた荒地が残るだけになれば、もったいないでは済まされません。
 
平成18年8月1日
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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代表取締役会長
山崎 秀尚

 
 
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