COLUMN written by Yamazaki
第33回
 
チャレンジ精神の欠如が国を滅ぼす
 
 


  2016 年夏季オリンピックの国内候補地が東京に決まりました。今後、米国はもちろん、南米やアフリカ等の有力候補地との競争が始まりますが、東京が開催地に選ばれることを祈っています。同時に、敗れた福岡市も地方都市ながら健闘したことは賞賛に値することだと思います。
  一方、このニュースを見ていて、非常に見苦しい振る舞いをした連中がいたのは残念でした。
  ひとつは、選定委員の中で投票方法にクレームを付け、会場を混乱させた者がいたことです。どちらの都市に投票するかということは、こそこそしなければならないほどやましい行為なのでしょうか。何らかの団体の代表として責任のある立場であれば、堂々と自分の意思を表明するのが筋というものです。それを自分の席で書けば分かってしまうから隠れて書きたいとは、スポーツに携わる人間として恥ずべきことです。
  もうひとつは、福岡市で候補地決定を待ちわびる人々に混じって、落選が決まった時に拍手喝采した招致反対派の集団がいたことです。落選したことを喜びたいのであれば、自前の会場を用意して勝手にするべきです。落選のショックの受けている人を前にしてこれ見よがしのアピールをする下品さは、実力ではなく金で世界タイトルを買ったボクサー風バラエティータレントと五十歩百歩です。
  先月のコラムにも書きましたが、昨今は、財政を口実に、国や自治体の計画を止めさせようとすることが蔓延しているようです。オリンピックの招致には多額の費用がかかるため、財政的に苦しい福岡市が立候補することに反対するのも、その現象のひとつでしょう。
  しかし、古今東西、財政的に何の問題もない国や地域などは例外中の例外であり、いずれもが苦しい経済情勢を克服しながら進歩を続けてきたのです。日本は世界第二位の経済大国でありながら、夏季大会の開催は一度だけであって、複数回開催していないほうが不自然です。たとえ、 2016 年に失敗しても 2020 年に再チャレンジすると石原都知事は発言していますが、その姿勢こそ是とすべきです。招致活動は石原都知事の再選を目的とする選挙対策であると揶揄する向きもありますが、そんなことはどちらでもよい話です。東京は利用できるスポーツ施設が充実していて費用面で割安である上、建設予定の 10 万人規模のスタジアムは予てから必要性が説かれていました。これだけ条件の揃った都市が立候補しない理由はありません。
  たしかに、長野はオリンピック終了後に不況に陥り、 2008 年大会に立候補した大阪市は、杜撰な計画で失敗した上、誰も使わない競技施設が大阪湾上の人工島に建ち並んでいるなど、負の遺産を引きずっています。オリンピック開催後や招致失敗後の施設利用に見通しが立たない都市が立候補することは、市民のためにならないのは当然であり、これらの失敗は許されざることです。だからこそ、既存の施設を使う東京は、最適な開催地であると言えるのです。
  また、外国の都市が選ばれるかもしれないから立候補しない方がよいなどと白けたことを言う連中がいます。開催に批判的な発言のほうが合理的であるかのように受け入れられる空気があるのも事実です。しかし、私に言わせれば、それらの精神構造はニートと何ら変わりません。成功する保証がないからといって何もしなければニートになるしかないのと同様、国や自治体もチャレンジを止めたとき、その崩壊が始まります。次に日本でオリンピックが開催されたときに、反対派は試合会場もテレビも含めて一切観戦しないでしょうか。今は実感のない話なので、関心を示す人は少なく盛り上がりに欠けていますが、もし開催されれば大会期間中は、日本中がオリンピック一色になると断言できます。前回の東京オリンピックしかり、 2002 年のサッカー・ワールドカップしかり。やらなければよかったと考える人は、ほとんどいません。国際的なイベントの魅力とはそういうものです。
  開催には約 5 千億円の費用がかかるそうですが、国民一人当たり約 4 千円で 17 日間楽しめるなら安いものです。また、ヨーロッパで開催された場合とは異なり、深夜のテレビ中継を延々と見続けて睡眠不足に悩まされることもないのです。東京都が 2 兆 8 千億と試算している経済効果は誇大妄想に類するもので信じられませんが、相当の経済効果があることは明白です。
  万一、日本が国を挙げてオリンピック招致に邁進できないようであれば、それは即ち、現在の日本人は昭和 30 年代の日本人よりも劣っていることの証拠であり、日本が自信を失って国全体がニート化している証拠です。そうならないことを願いつつ、私は日本人として日本でオリンピックが開催されることを期待しています。

  追伸 次回のコラムは楽天がテーマになるのでしょうか。司法当局の動きから目が離せません。

 
平成18年9月1日
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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代表取締役会長
山崎 秀尚

 
 
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